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平成24年 「年頭の辞」

国土交通省自動車局長  中 田  徹

  皆様、新年あけましておめでとうございます。
  平成24年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

  昨年3月に発生しました東日本大震災という未曾有の災害につきまして、自動車関連の事業者等の皆様におかれましては、発災直後からのトラックによる緊急物資輸送や高速バス、鉄道代替バス等の早期運行、避難所における移動自動車相談所の開設など、まさに被災者の生活・生命をつなぐライフラインとして、多大なご尽力をいただきましたことに改めて深く敬意と感謝を申し上げます。
  さて、最近の我が国の経済は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直してきたものの、国際経済の動向やデフレの影響により、雇用情勢の悪化懸念が依然残っております。このような経済状況の下、運輸業界にあっても依然厳しい経営環境にあるものと認識しておりますが、自動車関連の事業に携わっておられる皆様におかれましては、多様化・複雑化する利用者ニーズに対応したサービスを提供するとともに、安全確保や環境保全に対して弛まぬご努力をされておられるところであり、心から敬意を表する次第であります。
  私どもといたしましては、自動車交通は国民や社会の安全・安心の確保、低炭素社会の実現に不可欠な極めて公共性の高い性格を有しているとの認識の下、経済社会情勢の変化や利用者の多様なニーズへの対応、安定的なサービスの提供体制の確保、低公害化の推進等自動車行政を巡る様々な課題に対応し、国民の方々や自動車関連の事業に携わる皆様の期待に応えられるよう、本省、地方運輸局、沖縄総合事務局、運輸支局が一体となって、以下のような施策を中心に、政務3役のご指示をいただきながら取り組んで参ります。このためにも、是非とも、今後の交通に関する基本理念を定める交通基本法の成立が望まれます。

  第一は、地域の活性化・再生のための地域公共交通の実現です。
我が国では、多くの地方で人口の減少により、地域の活力が弱まり、地域間格差の問題も生じています。通学、通院など地域の生活交通を支えるバスについても、輸送需要の減少傾向が続いており、極めて厳しい運営状況にあり、事業者や自治体の懸命の努力にもかかわらず、バス事業者の経営破綻や路線撤退が生じています。
  国土交通省では、平成23年度に創設した『地域公共交通確保維持改善事業』において、平成24年度予算332億円を確保することとしています。この中には、東日本大震災の復旧・復興に係る予算26億円が含まれており、移動ニーズの変化等による被災地域の生活交通の確保維持や生活交通の存続危機地域における最適な移動手段の確保やバリアフリー化等移動に当たっての様々な障害が解消されるような取り組みが、全国的に促進されるよう、必要な支援を一体的に行うこととしています。平成24年度税制大綱においても、バリアフリー車両の導入促進のため、平成24年度から3年間、ノンステップバス、リフト付きバス、ユニバーサルデザインタクシーについて自動車重量税及び自動車取得税の特例措置が創設されることとなっております。
  一方、高速バスはバス産業における成長分野であり、地域間交流の拡大を支える重要な役割を担っています。近年のいわゆる高速ツアーバスが急成長する中で、公平な競争条件の下でより安全で利便性の高い高速バスサービスの実現が求められていることから、「バス事業のあり方検討会」を開催し、バス事業規制の見直しの方向性などを中心に検討を行っています。昨年6月に取りまとめられた中間報告では、高速乗合バス規制の見直しや貸切バスの健全な発展に向けた方策等について具体的な方向性が示されました。年度内を目途に最終報告が取りまとめられる予定であり、その報告に基づき、必要に応じて所要の措置を講じて参ります。
  タクシーについては、平成21年10月に施行されたタクシー適正化・活性化法に基づき、特定地域として指定された地域において、タクシー事業者などの関係者が事業の適正化・活性化に向けた取り組みを進めているところです。全国の特定地域では、基準車両数から11.5%の減・休車が実施された結果、各交通圏の日車営収を対前年同月と比較すると、東日本大震災の影響を除くと概ね向上するなど、一定の効果が現れています。現在、同法施行の効果を検証するために各種指標を収集しているところであり、これらを分析の上、今後必要となる施策について検討して参りたいと思います。

  第二に、国民経済を支えるトラック輸送の適切な発展の確保です。
  トラック産業は、我が国の経済と人々の暮らしを支えている重要な産業です。とりわけ、東日本大震災における被災地への緊急物資輸送等において多大な貢献をされ、被災者の生活・生命をつなぐライフラインとしての重要な役割を担っていただき、多くの国民に、トラック産業が我が国の産業活動や国民生活にとって不可欠の社会的基盤であることが改めて認識されたものと確信しています。現在、国土交通省では、災害に強い物流ネットワークの構築を進めており、そのような物流を担うトラックの活躍にますます期待をしております。
  一方、このように重要な産業でありながら、その担い手のほとんどは中小零細の事業者の方々であり、取り巻く経営環境はデフレ経済の影響もあり、依然として厳しい状況にあります。また、地球温暖化対策をはじめとする環境問題や交通安全対策に対する社会的要請の高まりなど、トラックをとりまく経済社会の環境は大きく変化しています。
  こうした状況の中、昨年8月に成立した運輸事業の振興の助成に関する法律に基づく交付金について、トラック事業の振興のため、これまで以上に有意義にご活用頂くとともに、国土交通省としても総務省と連携を取り、法律の趣旨に沿って都道府県の理解促進を働きかける等、円滑な制度運用に努めて参ります。
  また、平成24年度から2年間、中小企業投資促進税制が延長されることになりましたので、トラック事業の生産性の向上やさらなる経営の近代化にご活用いただきたいと思います。
  一方、平成22年7月のトラック産業の将来ビジョンに関する検討会の中間整理を受けて、トラック事業者の海外進出を支援することを目的に、昨年末に「海外進出セミナー」を各地で開催し、海外の物流事情等について情報提供を行いました。本年3月には、現地調査のための海外ミッション団の派遣を予定しており、引き続き海外進出に対する支援に取り組んでまいります。さらに、トラック事業の規制緩和後の課題である最低車両台数のあり方や適正運賃収受の取り組みについて、ワーキンググループにおいて議論を進めているところであり、今後、ワーキンググループで行ったトラック輸送の実態について全国的な調査の結果等を踏まえ、規制緩和後の諸課題の解決に向けて、結論が得られるよう検討を進めて参ります。
  このほか、トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議の枠組みを活用し、今後とも、荷主とトラック運送事業者、元請事業者と下請事業者の良好なパートナーシップを構築することにより事業者間の適正取引をさらに推進して参ります。

  第三に自動車安全対策の推進です。
  交通事故の発生状況については、交通事故死者数、交通事故件数とも減少傾向にありますが、未だ多くの尊い命が交通事故の犠牲になっています。
  昨年6月に取りまとめられた交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会の報告を踏まえ、少子高齢化への対応、歩行者・自転車乗員の事故防止・被害軽減対策、新たなモビリティへの対応、大型車がからむ重大事故対策を中心に車両安全対策の推進に取り組んで参ります。
  また、ASV(先進安全自動車)等の予防安全技術の普及促進、交通事故時の衝突被害軽減対策の充実、大型車の安全対策の推進、自動車アセスメント等については、今後も引き続き取り組んで参ります。平成24年度税制大綱においては、ASVの普及促進のため、平成24年度から3年間、ASVのうち衝突被害軽減ブレーキを備えた大型トラックについて自動車重量税及び自動車取得税の特例措置が創設されることとなっております。
  一方で、事業用自動車の事故削減に向けた取り組みを一層進めるべく平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付け、IT点呼に係る要件の拡大、デジタル式運行記録計等の運行管理の高度化に資する機器の導入等に対する支援等を実施したほか、同プランの進捗のフォローアップや新たな施策に関する意見交換を行って参りました。本年も本プランの目標を確実に達成するための施策の展開とともに、PDCAサイクルに沿った定期的、継続的なチェックを進めて参りたいと考えております。
  また、交通事故の傾向を踏まえた特定テーマの安全対策として、「乗合バスの車内事故を防止するための安全対策実施マニュアル」を策定しましたが、今後も引き続き事故の調査・分析体制を拡大させていくとともに、再発防止策の提言を行っていくこととしております。
  海上コンテナの自動車輸送にかかる安全対策ついても、早急に取り組むべき喫緊の課題であると考えております。現在、コンテナトレーラーの安全運転速度や是正すべき偏荷重を把握するための実証実験の実施や「国際海陸一貫運送コンテナの収納のためのガイドライン」改正にかかる国際的な取り組みの実施などを講じているところです。また「国際海陸一貫運送コンテナの自動車運送の安全確保に関する法律案(仮称)」については、再提出に向けた準備を進めて参ります。
  自動車検査については、不正二次架装・不正車検の防止等を図るため、画像取得・3次元測定装置の運用を行うとともに、受検者への審査結果情報の提供等のための施設整備を進め、今後ともIT化された検査情報の活用等、検査の高度化に取り組んで参ります。
  また、新技術を利用した自動車が増加していることに鑑み、自動車整備技術の高度化等整備事業者の技術的基盤強化を促進するための施策を検討して参ります。
  本年も点検整備の励行を促進するとともに不正改造車を排除する運動を全国的に実施してその排除を図って参ります。また、ペーパー車検など悪質な事案に対して厳正に対処するとともに、未認証事業者に対しても適切に対処して参ります。
  自動車のリコール制度に関しては、技術検証体制を強化するとともに、従前のリコール対策室を、リコール届出・勧告等を担う「リコール監理室」と、不具合情報の能動的な調査分析等を担う「不具合情報調査推進室」に改組・拡充しました。今後とも強化された体制を活かし、引き続きユーザーの視点に立ちリコールの適切かつ迅速な実施に取り組んで参ります。

  第四は、自動車の環境対策の推進です。
  政府のエネルギー・環境対策に関する方針については、東日本大震災に伴う原子力発電所の事故を受けて、エネルギー・環境会議を中心に検討がなされているところであり、本年年央を目途に、「革新的エネルギー・環境戦略」の策定や「エネルギー基本計画(平成22年6月閣議決定)」の改定等が予定されています。
  これら政府全体の方針に従って、自動車からのCO2排出削減対策に積極的に取り組むため、2020年に向けた乗用車の新たな燃費基準について、平成23年10月の審議会での取りまとめを踏まえ、関係法令の改正の作業を行っているところです。燃費基準達成車が普及するよう、自動車燃費の評価・公表制度を引き続き運用して参ります。また、自動車からの窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の排出削減のため、ディーゼル車に対するポスト新長期排出ガス規制を適切に実施していくとともに、大型車のオフサイクル時における排出ガス実態把握やオフサイクル時の排出ガスに関する追加対策の検討を進めているところです。
  さらに、予算、税制上の措置により環境対応車の導入促進を図るため、平成23年度第4次補正予算において、事業用自動車に対し219億円のエコカー補助が盛り込まれております。また、平成24年度予算においては、環境性能に優れたCNG自動車及びハイブリッド自動車の導入支援を引き続き行うとともに、電気自動車の集中的導入のための先駆的な取組支援を行います。平成24年度税制大綱においては、環境性能に優れた自動車(エコカー)について自動車重量税の当分の間税率が廃止されるとともに、新たな燃費基準に基づき区分を再編し、ハイブリッド自動車の燃費性能に匹敵する従来車を免税の対象に追加する等の見直し・拡充を行った上で、エコカー減税(自動車重量税及び自動車取得税)やグリーン化特例(自動車税)等が延長されることとなっております。今後においても環境対応車の導入に向けて更なる普及促進を図って参ります。
  中長期的な視点に立った、地球環境問題、大気汚染問題への対応については、実証走行試験を実施する等により既存の大型ディーゼル車に代替する次世代大型車の開発・実用化の取り組みを進める他、都市局と連携して、電気自動車や超小型モビリティを初めとした環境対応車を活用したまちづくりについての取り組みを進めて参ります。

  第五に、自動車の基準の国際調和及び認証の相互承認の推進を始めとした国際展開等への対応です。
  自動車基準・認証制度の国際化については、昨年6月、官民の代表者からなる「自動車基準認証国際化ハイレベル会議」において「自動車基準認証国際化行動計画」が取りまとめられました。この中では、次の4つの柱を着実に実施することとされています。
  「日本の技術・基準の戦略的国際基準化」については、自動車産業のグローバル化が進展した現在、国内外で車両の安全・環境対策を効果的かつ効率的に実施していくために、安全・環境基準の国際調和を推進するとともに、日本発イノベーションの世界的な普及も併せて考慮することが不可欠であると考えており、電気自動車に関連する新技術等について国連等の場において積極的に取り組み、国際基準の策定に貢献して参ります。
  「アジア諸国との連携」については、自動車基準の調和に関する活動にアジア諸国の参加促進を支援していくことも非常に重要と考えております。第8回日ASEAN交通大臣会合で承認された日ASEAN自動車基準・認証制度に関する協力プログラムの具体的取組として、昨年2月に訪日研修、7月にワークショップ、11月に第2回 アジア地域 官民共同フォーラムを開催したほか、8月からはフィリピンの制度整備支援のための型式認証プロジェクトを推進しています。今後も同プログラムに基づく取り組み等を通じ、アジア諸国との連携を一層強化して参ります。
  「全世界的かつ車両単位の相互承認の実現」については、我が国は、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)における「国際的な車両型式認証の相互承認制度(IWVTA)」の構築に向けた活動に積極的に参画しており、昨年11月に開催されたWP29では、IWVTAの創設に向けたロードマップ及び1958年協定改正の検討項目について合意されました。今後、平成28年3月までにIWVTAの実現に向けた基盤整備を行うこととしており、我が国においても、IWVTA実現に必要な技術基準について、国内の安全確保及び環境保全を前提としつつ、WP29で合意されたロードマップに沿って国際基準の改正提案等を行い、着実に採用して参ります。
  「基準認証のグローバル化に対応する体制の整備」については、アジア諸国との連携を一層強化するためのASEAN事務局等との緊密な関係の構築や、技術基準の整備をはじめとするIWVTA実現に向けた基盤整備への適切な対応等のため、体制整備を推進して参ります。
  また、昨年7月の組織再編に伴い、自動車局一体となって国際関連業務に取り組むための体制として、国際企画室を組織いたしました。これまでの取り組みを引き続き着実に推進するとともに、局横断的な視点を付加することで、国際対応のさらなる円滑化と新たな成長分野の創出を目指して参ります。

  第六は、安心な「くるま社会」の基盤づくりの推進です。
  自動車の登録制度は、全国的に流通する複雑な自動車取引の安全性の確保や自動車に関する各種行政の適正な執行を図るための「自動車情報インフラ」として、「くるま社会」を支える重要な役割を担っています。自動車の製造、販売、整備はもとより、リース・信販、保険等の幅広い分野でご利用いただいておりますが、引き続き、十分な個人情報保護対策を講じつつ、多様なユーザーニーズに対応した情報提供を行って参ります。
  また、自動車保有関係手続のワンストップサービス(OSS)については、稼働している10都府県全てで急速に利用が拡大してきており、平成23年10月には稼働地域での月間の申請率が57.1%と、初めて50%を超えました。今後とも、より一層の利用拡大に向けて、利用環境の改善を継続的に進めるとともに、関係機関との連携・協力を強化し、中間登録への手続拡大及び稼働地域拡大を図って参ります。
  さらに、全国各地からのいわゆる「ご当地ナンバー」拡大の要望、ナンバープレートの形状等に対する価値観の多様化、ナンバープレート情報のさらなる活用への期待の高まり等、昨今のナンバープレートを巡る状況を踏まえ、「ナンバープレートのあり方に関する懇談会」を昨年10月から開催し、ナンバープレートの今後のあり方について、現行制度の抜本的な見直しも視野に入れつつ、検討を進めております。まずは、本年度内を目途に中間とりまとめを行うべく、検討を進めて参ります。
  なお、自動車の検査・登録制度に関しては、政府全体の特別会計改革や独立行政法人改革の中で、国と自動車検査独立行政法人の業務の一体化等の方向性が示されているところですが、対応について、引き続き、検討を進めて参ります。
  自動車損害賠償保障制度に関しては、一昨年の特別会計事業仕分けの評価結果を踏まえ、引き続き、被害者救済対策の充実に取り組んでおります。その中でも、在宅で療養生活を送る重度後遺障害者や介護されているご家族に対する取り組みについては、介護されているご家族や短期入院を受け入れる協力病院の看護師、医療ソーシャルワーカー(MSW)等からご意見をお聞きして、より一層の安定した在宅療護生活が送れるような環境整備を促進しております。今後も、さらなる協力病院や療護センターの委託病床の確保に努めて参ります。
  また、会計検査院からの指摘を受け、無保険車対策について監視活動及び街頭取締りを適切に実施するように各地方運輸局等に対して徹底を図るなどの対策を進め、今後とも無保険車による事故を防止するための取り組みを進め、被害者の救済が確実に図られるよう努めて参ります。

  以上、年頭に当たり、本年推進していく自動車行政の重点施策を述べて参りましたが、自動車局といたしましては、本年も国民及び関係者の方々や社会の期待・要請を的確に把握し、それに十分に応えられるように、地方運輸局等とともに、関係する諸機関・団体との連携を一層密にしつつ、全力を尽くす所存であります。本年も自動車行政の推進に対しまして、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
  最後になりましたが、自動車関連の事業に携われておられる皆様が、本年もまたそれぞれの分野において大いにご活躍され、利用者や国民・社会の高い評価と広い支持を得て、一層の発展を遂げられますことを祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。(終)