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平成25年 「年頭の辞」

国土交通省自動車局長  武藤 浩

  皆様、新年あけましておめでとうございます。
  平成25年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

  まずはじめに、昨年4月、関越道において、乗客7名が死亡、38名が重軽傷を負うという誠に痛ましい高速ツアーバス事故が発生しました。この場を借りて、心よりお悔やみとお見舞い申し上げます。国土交通省としましては、事故後、緊急重点監査や過労運転防止の基準強化等の対策を実施してまいりました。現在は、監査のあり方やバス事業のあり方等の課題について有識者による検討を行っております。今後各種検討会の結論を踏まえ、安全確保について実効性ある対策を迅速かつ着実に実施して参ります。
  さて、最近の我が国の経済は、国際経済の動向やデフレの影響により、雇用情勢は依然として厳しさが残っております。このような経済状況の下、運輸業界にあっても依然厳しい経営環境にあるものと認識しておりますが、自動車関連の事業に携わっておられる皆様におかれましては、多様化・複雑化する利用者ニーズに対応したサービスを提供するとともに、安全確保や環境保全に対して弛まぬご努力をされておられるところであり、心から敬意を表する次第であります。
  私どもといたしましては、自動車交通は、国民や社会の安全・安心の確保、経済活動に不可欠な、極めて公共性の高い性格を有しているものであるとの認識の下、経済社会情勢の変化や利用者の多様なニーズへの対応、安定的なサービスの提供体制の確保、低公害化の推進等自動車行政を巡る様々な課題に対応し、国民の方々や自動車関連の事業に携わる皆様の期待に応えられるよう、本省、地方運輸局、沖縄総合事務局、運輸支局等が一体となって、以下のような施策を中心に取り組んで参ります。

  第1は、自動車の安全対策の推進です。
  近年、交通事故による死傷者数は減少傾向にありますが、未だ多くの方々が交通事故の犠牲になっており、交通事故の現状は依然として深刻な状況にあります。
  昨年4月に発生した高速ツアーバス事故を踏まえた安全対策については、昨年6月に、緊急安全対策として緊急重点監査の実施、旅行業者・貸切バス事業者間の書面取引の義務化、高速バス表示ガイドラインの策定、高速ツアーバス安全通報窓口の設置、夜間運行する高速ツアーバスにおける交替運転者の配置基準の設定など10項目を取りまとめて実施したほか、昨年12月から夜間運行するその他の貸切バスに交替運転者の配置基準を設定するなど過労運転防止対策の強化を進めております。また、高速ツアーバスについては、昨年3月に取りまとめられた「バス事業のあり方検討会」報告書や上記の緊急安全対策等を踏まえ、昨年7月、新高速乗合バス制度を創設したところであり、高速ツアーバス事業者に対し、本年7月末までの新高速乗合バスへの移行を強力に指導するとともに、円滑な移行のため、乗合バス事業の許可取得に必要なバス停留所の確保に向けた調整を進めて参ります。このほか、運行管理、監査・処分の見直し、過労運転防止対策、貸切バスの運賃・料金制度等、引き続き検討すべきとされた中長期的課題については、「バス事業のあり方検討会」等の外部の有識者等による検討の場を設置して検討を進めているところであり、早急に結論を得るべく、鋭意取り組んで参ります。
  車両安全対策については、安全基準等の拡充・強化、先進安全自動車(ASV)推進計画、自動車アセスメントの3つの施策の連携を図りながら取り組んで参ります。
  具体的には、高速ツアーバス事故等を踏まえ、高速バス等に対して衝突被害軽減ブレーキの基準化・義務付けを行うべく今後関係法令の整備を行うこととしており、税制面、予算面の措置を通じた先進安全自動車(ASV)の導入促進を図って参ります。さらに、本年10月に開催されるITS世界会議東京2013において、我が国のASV技術を世界に発信するべく積極的に取り組んで参るほか、自動車アセスメントでは、予防安全技術についての評価導入に向けて検討を進めて参ります。
  一方で、事業用自動車の事故削減に向けた取り組みを一層進めるべく平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、点呼時におけるアルコールチェッカーの使用の義務付け、IT点呼に係る要件の拡大、デジタル式運行記録計等の運行管理の高度化に資する機器の導入等に対する支援等を実施したほか、同プランの進捗のフォローアップや新たな施策に関する意見交換を行って参りました。本年も本プランの目標を確実に達成するための施策の展開とともに、PDCAサイクルに沿った定期的、継続的なチェックを進めて参りたいと考えております。
  また、交通事故の傾向を踏まえた特定テーマの安全対策として、「トラック追突事故防止マニュアル」を策定しましたが、今後も引き続き事故の調査・分析体制を充実させていくとともに、再発防止策の提言を行っていくこととしております。
  海上コンテナの自動車輸送にかかる安全対策についても、早急に取り組むべき喫緊の課題であると考えております。現在、コンテナトレーラーの安全運転速度や是正すべき偏荷重を把握するための実証実験を行うとともに、「国際海陸一貫運送コンテナの収納のための国際ガイドライン」改正等の国際ルールの策定に関する取り組みを講じています。引き続き、コンテナトレーラーの横転に関する調査や国際的動向を踏まえ、海上コンテナの自動車輸送にかかる安全対策を実施していく所存です。
  自動車検査については、不正車検の防止等を図るため、検査時の車両画像取得や3次元測定装置の運用を引き続き進めるとともに、受検者への審査結果情報の提供等のための施設整備を進め、今後とも厳正な検査と検査の高度化に取り組んで参ります。
  また、新技術を搭載した自動車が増加していることに鑑み、自動車整備技術の高度化等整備事業者の技術的基盤強化を促進するための施策を検討して参ります。
  確実な点検整備の実施については、引き続き、その励行を促進するとともに、点検整備実施率をより一層向上させるための方策も検討・実施して参ります。また、ペーパー車検など悪質な事案に対して厳正に対処するとともに、未認証事業者に対しても適切に対処して参ります。
  自動車のリコール制度に関しては、昨年度に技術検証体制を強化するとともに、従前のリコール対策室を、リコール届出・勧告等を担う「リコール監理室」と、不具合情報の能動的な調査分析等を担う「不具合情報調査推進室」に改組・拡充しました。今後とも強化された体制を活かし、引き続きユーザーの視点に立ちリコールの適切かつ迅速な実施に取り組んで参ります。

  第2は、地域の活性化・再生のための地域公共交通の実現です。
  我が国では、多くの地方で人口の減少により、地域の活力が弱まり、地域間格差の問題も生じています。通学、通院など地域の生活交通を支えるバスについても、輸送需要の減少傾向が続いており、極めて厳しい運営状況にあり、事業者や自治体の懸命の努力にもかかわらず、バス事業者の路線撤退や経営破綻が生じています。
  国土交通省では、平成23年度に創設した『地域公共交通確保維持改善事業』について、引き続き支援を行って参りたいと考えています。具体的には、移動ニーズの変化等による被災地域の生活交通の確保維持や生活交通の存続危機地域における最適な移動手段の確保やバリアフリー化等移動に当たっての様々な障害が解消されるような取り組みが全国的に促進されるよう、必要な支援を一体的に行うこととしています。
  タクシーについては、平成21年10月に施行されたタクシー適正化・活性化法に基づき特定地域として指定された地域において、タクシー事業者などの関係者が事業の適正化・活性化に向けた取り組みを進められてきたところです。全国の特定地域では、供給量が削減され、日車営収の改善が見られるとともに、運賃の適正化も図られるなど、一定の効果を上げてきました。一方で、リーマン・ショックを契機とした経済全体の落ち込みにより、タクシー業界は依然として厳しい状況にあることから、昨年9月末で特定地域の指定期間が期限を迎えた地域について、昨年10月1日付けで再指定を行ったところです。国土交通省としては、関係者のご協力を賜りながら、今後とも各地域におけるタクシー事業の適正化・活性化に関する取組を推進するとともに、必要な措置を講じて参りたいと思います。また、タクシーに関する議員立法の動きについても、適切に対応して参ります。

  第3は、国民経済を支えるトラック輸送の適切な発展の確保です。
  トラック産業は、我が国の経済と人々の暮らしを支えている重要な産業です。
  他方、その担い手のほとんどは中小・小規模事業者の方々であり、近年の景気停滞等による国内輸送量が伸び悩んでいることや最近の軽油価格の高止まりなどの影響により厳しい経営環境にあります。
  このような状況の中、トラック産業の将来ビジョンにつきましては、昨年12月に第5回トラック産業の将来ビジョンに関する検討会を開催し、ワーキンググループの報告書において提言を受けた安全性、健全性を向上させるための施策を早急に実施するとともに参入や多層構造問題に関する必要な対策を推進するための検討を行う作業部会を設置することといたしました。今後は、新たな作業部会において、現在のトラック事業が抱える様々な課題等について、有識者やトラック業界をはじめとする関係者の方々と議論を深めるとともに、安全かつ健全なトラック事業の実現に向けて必要な対策を講じて参りたいと思います。
  また、トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議の枠組を活用し、今後とも、荷主とトラック運送事業者、元請事業者と下請事業者の良好なパートナーシップを構築することにより、これら事業者間の適正取引をさらに推進して参ります。
  このほか、運輸事業振興助成交付金については、平成23年8月の運輸事業の振興の助成に関する法律の制定から一年が経過し、都道府県からの交付額についても一定の改善が図られてきておりますが、国土交通省としては、今後とも、総務省と連携して法律の趣旨に則った交付が行われるように都道府県に働きかける等、円滑な制度運用に努めて参ります。

  第4は、自動車の環境対策の推進です。
  ポスト京都議定書に向けた国内外の動向及び東日本大震災・原発事故の発生を受け、政府全体としてエネルギー・環境政策の抜本的な見直しの動きが進んでおりますが、自動車分野からのCO2排出量は我が国全体の約2割、運輸部門の約9割にのぼるなど、自動車分野における地球温暖化対策等は重要な課題であると考えております。このような課題に対応するため、政府全体のエネルギー・環境政策の見直しの動きを踏まえつつ、以下のような施策に取り組んで参ります。
  まず、環境対応車の開発・普及促進に向けた取組を行って参ります。
  2020年度乗用車燃費基準に続いて、小型貨物車などの新たな燃費基準の策定に向けた検討を進めてまいります。また、エコカー減税、低公害車(CNG自動車及びハイブリッド自動車)の購入補助制度等を活用した環境性能に優れた車両の普及も推進してまいります。車体課税に関しては、簡素化、負担の軽減、グリーン化等の税制改正について検討を行っており、自動車購入時の税負担の軽減により、環境、安全性能等の高い新車代替を促して参ります。さらに、多くのCO2を排出している大型車分野において、既存の大型ディーゼル車に代替する次世代大型車の開発・実用化の取組も進めて参ります。
  次に、環境対応車を活用したまちづくりに向けた取組を行って参ります。
  超小型モビリティをはじめとする電気自動車等(環境対応車)は、低炭素社会の実現に資するとともに、人口減少・高齢化時代に対応するコンパクトなまちづくりにも適した交通手段です。このため、都市の低炭素化、集約型都市構造の実現、高齢化社会への対応等持続可能なまちづくりに向けた取組と環境対応車普及の取組を一体的に推進し、環境対応車を活用した低炭素まちづくりの実現を図って参ります。電気自動車については、集中的導入のための先駆的な取組支援を引き続き行って参りたいと考えております。また、「新たなカテゴリー」の乗物である超小型モビリティについては、公道走行を簡便な手続で行えるようにする認定制度を本年1月目途に創設するとともに、地方自治体、観光・流通関係事業者、ディベロッパー等の主導による先導導入や試行導入の優れた取組を重点的に支援して参りたいと考えております。
  また、自動車排出ガス・騒音対策の推進を図って参ります。
  自動車からの窒素酸化物(NOx)及び粒子状物質(PM)の排出削減のためディーゼル車に対するポスト新長期排出ガス規制等を引き続き適切に実施していくとともに、尿素SCRを使用した新長期適合車の後処理装置劣化の問題についての検討を環境省とともに行って参ります。

  第5は、自動車の基準の国際調和及び認証の相互承認の推進を始めとした国際展開等への対応です。
  自動車分野における国際化については、自動車基準・認証を始めとし、検査・登録制度、自動車損害賠償保障制度、バス・トラックなどの公共交通に係る制度等、これまで築き上げてきた安全・環境に係る制度、技術・運用ノウハウ等の「ソフトインフラ」について、アジア諸国をはじめとする新興国への導入支援を図るなどにより、これらの国々の交通安全や環境対策に貢献するとともに、我が国自動車関連産業の国際展開の支援等を図って参ります。
  特に、自動車基準・認証制度の国際化については、安全・環境性能に優れた自動車の普及の促進、我が国企業が国際的に活躍できる環境整備を行うため、「自動車基準認証国際化行動計画」の次の4つの柱を着実に実施することとします。
  まず、「日本の技術・基準の戦略的国際基準化」については、国連自動車基準調和世界フォーラム(WP29)における自動車基準の国際調和活動に引き続き積極的に貢献していきます。特に、我が国が強みを持つ電気自動車や燃料電池自動車といった次世代自動車及び先進安全自動車(ASV)について国際基準の策定を主導して参ります。
  次に、「アジア諸国との連携」については、近年のアジアのモータリゼーションの進展により、アジアにおける交通事故・大気汚染の防止が重要な課題となっていることから、アジア諸国の基準調和活動を支援していくことが重要です。これまで第8回日ASEAN交通大臣会合で承認された日ASEAN自動車基準・認証制度に関する協力プログラムに基づき、ワークショップや研修等の技術協力、アジア地域 官民共同フォーラムを開催しています。今後も同プログラムに基づき、アジア諸国の基準調和活動への支援をより一層強化して参ります。
  また、「全世界かつ車両単位の相互承認の実現」について、現在、WP29において合意されたロードマップに基づき、2015年度の国際的な車両型式認証の相互承認制度(IWVTA)の協定案策定を目指した議論が行われています。我が国としては、WP29における議論に引き続き積極的に貢献していくとともに、国内の安全確保及び環境保全を前提として、国際基準の採用を着実に進めて参ります。
  最後に、「基準認証のグローバル化に対応する体制の整備」については、アジア諸国との連携を一層強化するためのASEAN事務局等との緊密な関係の構築や、IWVTA実現に向けた基盤整備への適切な対応等のため、官民連携による体制整備を推進して参ります。

  第6は、安心な「くるま社会」の基盤づくりの推進です。
  自動車の登録制度は、全国的に流通する複雑な自動車取引の安全性の確保や自動車に関する各種行政の適正な執行を図るための「自動車情報インフラ」として、「くるま社会」を支える重要な役割を担っています。自動車登録情報の提供にあたっては、自動車の製造、販売、整備はもとより、リース・信販、保険等の幅広い分野でご利用いただいておりますが、引き続き、十分な個人情報保護対策を講じつつ、多様なユーザーニーズに対応して参ります。
  また、自動車保有関係手続のワンストップサービスについては、その利用が急速に拡大しており、稼働地域においては自動車保有関係手続きの大半が当該サービスを利用したものになっています。今後とも、より多くの自動車ユーザーが本サービスを活用いただけるよう、関係機関と連携・協力しながら、利用環境の改善を継続的に進めるとともに、稼働地域の拡大、対象手続きの拡大等に向けた取り組みを実施して参ります。
  さらに、昨年7月に「ナンバープレートのあり方に関する懇談会」の最終取りまとめにおいて、平成26年度中の実施を目指して「ご当地ナンバー」を拡充する等の方向性が示されました。今後、懇談会で示された方向性に沿って、公募手続きの具体化など、ご当地ナンバーの追加に向けた作業を進めていくこととしています。
  なお、自動車の検査・登録制度に関しては、政府全体での行政改革等の動きも踏まえ、引き続き、諸課題に適切に対応して参ります。
  自動車損害賠償保障制度に関しては、引き続き自賠法の趣旨を踏まえ、被害者保護対策の充実に取り組んで参ります。特に、被害者保護の中核を担う独立行政法人自動車事故対策機構においては、平成24年度からの5カ年の中期目標・計画に基づき、療護施設の拡充や訪問支援の充実に鋭意取り組むこととしております。
  また、昨年度より開催して参りました被害者意見交換会におけるとりまとめを踏まえて、短期入院・短期入所や相談支援の充実に努めて参ります。今後も引き続き自動車事故による被害に遭われた方やそのご家族のご意見を伺い、被害者救済対策の一層の充実を図って参りたいと思います。

  以上、年頭に当たり、本年推進していく自動車行政の重点施策を述べて参りましたが、自動車局といたしましては、本年も国民及び関係者の方々や社会の期待・要請を的確に把握し、それに十分に応えられるように、地方運輸局等とともに、関係する諸機関・団体との連携を一層密にしつつ、全力を尽くす所存であります。本年も自動車行政の推進に対しまして、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
  最後になりましたが、自動車関連の事業に携われておられる皆様が、本年もまたそれぞれの分野において大いにご活躍され、利用者や国民・社会の高い評価と広い支持を得て、一層の発展を遂げられますことを祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。