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平成28年 「年頭の辞」

国土交通省自動車局長  藤井直樹

 皆様、新年あけましておめでとうございます。
 平成28年の新春を迎え、謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。

 最近の我が国の経済は、緩やかな景気の回復がみられ、デフレ脱却に向け着実に前進しているところですが、依然厳しい経営環境にある自動車関係事業者の方々も多いものと存じます。そのような中で、事業者の皆様におかれましては、多様化・複雑化する利用者ニーズに対応したサービスを提供するとともに、安全確保や環境保全に対して弛まぬご努力をされておられるところであり、心から敬意を表する次第です。
 国土交通省としては、自動車は社会経済活動に不可欠かつ人々の生活にとって最も身近な乗り物であるとの認識の下、本省自動車局、地方運輸局、沖縄総合事務局、運輸支局等が一体となって、
(1)生産性の向上
(2)サービスの向上
(3)安全性、環境性能の向上
を三本の柱として、施策を推進して参ります。

(1) 生産性の向上 
 人口減少、高齢化の下で、国民生活に欠かすことのできないバス・タクシー、トラック等による輸送サービスを確保するためには、サービスの効率性を高めるとともに、必要な人材を確保するための取組みが不可欠です。

【バス・タクシー事業】
 バス・タクシーは、通学や通院など地域住民の生活に欠かせない公共交通機関であり、地方創生の視点からも大きな期待が寄せられています。このため、国土交通省では、「地域公共交通確保維持改善事業」により、幹線バスやデマンド交通の運行、ノンステップバス・福祉タクシーの導入などに対する補助を実施しています。
 これらの支援を活用し、持続可能な地域公共交通を実現するためには、地域公共交通活性化再生法に基づく計画の策定と、それに基づく地域公共交通ネットワークの再編に関する総合的な取組みが不可欠です。現在、同法に基づく地域公共交通網形成計画を策定した地方自治体の数は60にのぼり、今後更なる増加が見込まれています。地域の交通事業者の方々におかれては、各市町村等が進める計画策定に積極的に参加・協力されますよう、よろしくお願いいたします。
 バス、タクシー等の公共輸送サービスが不十分である過疎地域・交通不便地域においては、自家用有償旅客運送制度を活用し、安全・安心を十分に図りつつ、地域住民の足に加えて、外国からの観光客等の交通手段としての自家用車の利用方策について検討を進めています。
 また、このような地域においては、必要性に応じて貨客混載や企業の集約化を進めることにより、自動車輸送全体の生産性の向上を高めて参ります。
 情報通信技術(ICT)の進展を活用した生産性の向上も重要です。タクシーの配車アプリを活用した運行効率の向上や、ICカードシステムを通じて得られるバスの輸送実績に関するビッグデータを活用した路線の見直しなどの取組みの全国的な拡大に取り組んで参ります。

【トラック事業】
 トラック事業は、我が国の経済と人々の暮らしを支えている重要な産業です。他方、その担い手のほとんどは中小事業者の方々であり、重層的な下請環境にあることから、荷主等に対して立場が弱く適正な運賃が収受できない、また荷主都合の待ち時間を押しつけられているなどの課題があります。
 このため、こうした下請を含む取引環境の改善及び長時間労働の抑制に向けて、昨年5月から8月にかけて、荷主、運送事業者、有識者、関係省庁等により構成される「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会」を中央及び各都道府県に設置しました。さらに、昨年11月には同協議会と「トラック運送業の生産性向上協議会」を同時開催し、トラック輸送の生産性の向上に向けても議論を本格化しました。平成28年度は、具体的な改善事例の創出に向けたパイロット事業を全国で実施する予定であるなど、今後も荷主を含めた関係者が一体となって、トラック輸送の取引環境の改善及び長時間労働の抑制に取り組んで参ります。
 また、来年度以降、高速道路の大口・多頻度割引の対象となるトラックにETC2.0の搭載が急速に進むものと想定されます。これにより集積されるビッグデータを物流の効率性向上に有効に活用することについても、合わせて推進して参ります。さらに、空荷の縮減、共同配送等の促進等による生産性向上の取組も進めて参ります。

【人材の確保】
 自動車運送事業及び整備事業における就業構造の現状を見ると、中高年層の男性労働者に依存しており、また女性の割合が2%程度と極めて少ないという特徴があります。給与水準も相対的に低い状況にあることから、今の状況のまま推移すれば、人口減少が進む中で、深刻な労働力不足に見舞われるおそれがあります。
 人材確保に向けては、労働条件の改善が何よりも重要です。トラックについては、前述した協議会の枠組みを活用し、荷主も含めた関係者が一体となってその改善に取り組むとともに、中継輸送の導入により、宿泊を伴わない勤務形態を可能とする取組みも進めて参ります。貸切バスについては、平成24年の関越道の事故等を踏まえ、ドライバー1人で運転可能な距離を短くするとともに、安全に関するコストを見込んだ新たな運賃・料金制度を発足させているところであり、その定着を図って参ります。
 また、新規採用者の拡大・定着を図るため、タクシー事業における給与制度の見直しやライフプランの構築等の新たな方策を検討するとともに、各運輸支局レベルで高校を訪問し、仕事内容についてのPRを行う取組みの充実:拡大を進めて参ります。
 さらに、女性の採用拡大に向けて、トラガール等のキャンペーンとともに、勤務形態、労働時間、トイレ問題など、女性が働きやすい環境整備のための課題に取り組んで参ります。
 なお、自動車整備業については、外国人技能実習制度の対象職種とするための検討を鋭意進めます。

【自動運転】
 自動運転については、「2020年に高速道路での自動運転等が可能となるよう、制度やインフラを整備する」こととされています。自動運転技術には、当面、衝突予防、車線逸脱防止等の運転支援メニューによるドライバーの負担軽減効果が期待されることから、それを女性の採用拡大等につなげる取組を進めて参ります。また、将来的にトラックの隊列走行等が実現すれば、抜本的な労働力不足対策となる可能性も秘めているところです。
 自動運転は本年9月に軽井沢において開催が予定されているG7交通大臣会合においても主要議題とされており、国土交通省としては、高速道路における自動車線変更や自動追い越しを可能とする自動操舵の国際基準作りを日本が主導して進めるなど、自動運転の実現に向けて、各種の取組を積極的に進めてまいります。

(2)サービスの向上
【タクシー事業の適正化・活性化】
 改正タクシー特措法が平成26年1月に施行され、昨年は、全国で19の地域を特定地域として指定しました。これらの地域においては、供給輸送力の削減のための減車を進めるための計画策定のための議論が進められています。この他、直近の輸送実績に基づき、13地域が特定地域の指定候補に該当したところです。
 改正タクシー特措法は、タクシー台数を需要に見合った適正なものとするとともに、適切な環境とルールの下での競争を促進することにより、そのサービスを活性化・多様化することを目的としています。今年1月にも「新しいタクシーのあり方検討会」の最終とりまとめを予定しているところですが、それを踏まえつつ、タクシー事業者の側では、初乗り距離短縮運賃の導入等の需要喚起のための多様な取組を積極的に行っていただきたいと考えています。
 昨今、自家用車を用いた、いわゆるライドシェアを巡って議論が行われています。ライドシェアに関する提案や実例においては、運転者と利用者を仲介するマッチング事業者は運送責任を負わないことが前提とされており、未然の事故防止や万が一の際の対応については運転手に任されています。この点をはじめとして、ライドシェアの提案には安全の確保、利用者の保護等の観点から大きな問題があり、極めて慎重な検討が必要と考えています。

【バスサービスの向上】
 高速バスの活性化については、昨年12月に発足した「国内観光の振興・国際観光の拡大に向けた高速バス・LCC等の利用促進協議会」において、高速バスサービスに関する国内外向け情報プラットフォームの構築、イメージプロモーション、外国人旅行者向けフリーパスや予約システムの開発・普及拡充、道の駅との連携推進等に取り組みます。
 バリアフリー化の推進については、輸送モード毎の整備目標達成に向けて着実に取組みを進めるとともに、羽田・成田空港への空港アクセスバスについて、リフト付きバスの実証運行を開始する予定です。
 BRTについては、東京臨海副都心部(2019年度内運行開始見込み)をはじめとして各地における導入とネットワーク拡大に対し、必要な支援を行って参ります。

【自動車情報の利活用】
 自動車の保有関係手続のワンストップサービス(OSS)化については、平成29年度までに全国展開や対象手続の拡大を行うべく、関係機関と連携・協力しながら取り組んで参ります。
 また、2020年オリンピック・パラリンピック東京大会に向け、我が国初となる五輪特別仕様のデザインを施したナンバープレートの交付の準備作業を進めています。合わせて、ご当地ナンバー等を主な対象として、それぞれの地域の特色をあしらった図柄入りナンバープレートの交付についても検討を進めて参ります。

(3)安全性と環境性能の向上
 交通事故による死傷者数は減少傾向にあるものの、第9次交通安全基本計画で掲げる死者数の削減目標(24時間死者数を3,000人以下)を達成することができず、その現状は依然として深刻な状況にあります。このような状況の中、本年は政府として第10次交通安全基本計画を策定し、人、車、道に関する安全対策を総合的に推進していくこととしています。
 
【ハード面の安全対策】
 自動車のハード面の安全対策については、昨年11月より、交通政策審議会にワーキング・グループを設置し、今後取り組むべき対策の方向性について検討を進めており、今年春頃を目処に結論を得る予定としております。安全基準については、二輪の燃料電池自動車や電気自動車の基準を整備するとともに、運転席からの死角を減らすカメラモニタリングシステムを導入するなど、新技術の普及促進に資する基準整備を進めて参ります。
 先進安全自動車(ASV)推進プロジェクトについては、本年3月に、ドライバー異常時対応システムや通信を利用した運転支援技術に関するガイドラインを策定することとしております。
 自動車アセスメントについては、歩行者保護性能評価を強化するほか、予防安全性能評価についても、今年度評価を開始した車両周辺視界情報提供装置(リアビューモニター)に加え、対歩行者衝突被害軽減ブレーキを来年度新たに対象に加えるなど、一層の拡充を図って参ります。
 リコールについては、特に硝酸アンモニウムを使用したタカタ製インフレータについて、総対象台数が11月末までに延べ1,171万台となっており、自動車メーカー等の協力の下に、速やかな交換を進めて参ります。不具合の原因については未だ調査中ですが、今後平成30年にかけてその使用を段階的に縮小・停止していくこととしています。

【事業用自動車の事故削減に向けた取組】
 事業用自動車の事故削減に向けた取組みについては、運輸安全マネジメント制度の推進、衝突被害軽減ブレーキやデジタル式運行記録計・映像記録型ドライブレコーダーの普及促進などを着実に実施し、安全・安心の確保に万全を期して参ります。
 また、事故件数が増加傾向にある健康起因事故について、主要疾病である脳疾患や心疾患などの早期発見に効果的なスクリーニング検査の普及方策について検討して参ります。
 なお、貸切バスについては、訪日外国人旅行者が増加傾向にある中で、一層の安全確保が必要であることから、昨年12月から2か月間にわたり集中的な監査を行い、過労運転の防止や、安全コストを見込んだ適正な運賃の収受を徹底することとしています。

【交通事故被害者対策】
 重度後遺障害の残る被害者の在宅生活を支えるための短期入所協力施設の指定拡充等を進めるとともに、独立行政法人自動車事故対策機構において本年4月より関東西部地区における新たな療護施設の運営を開始する等、被害者救済対策の一層の推進に努めて参ります。

【国際関係】
 自動車の検査・登録、損害賠償保障等に係る制度や、整備技能者の人材育成など、いわゆる「ソフトインフラ」について、アジア諸国をはじめとする新興国への導入の支援を進めて参ります。
 また、TPP合意における自動車関連関税の引下げ等を踏まえ、自動運転技術や車両型式認証制度に係る国際基準策定を主導し、我が国自動車関連産業を強化して参ります。
 なお、昨年11月のパリにおけるテロ事件を受け、国土交通省としても、テロ活動の未然防止に改めて万全を期してまいります。関係事業者におかれても、各種安全確保のための点検、警戒警備等の一層の徹底をよろしくお願いいたします。

【環境対応車の普及促進】
 昨年12月のCOP21における「パリ協定」の採択を受け、改めて自動車分野における地球温暖化対策を推進して参ります。
 平成28年度税制改正大綱において、平成29年4月に予定される消費税の10%引上げと自動車取得税の廃止に伴い導入される自動車税・軽自動車税に係る環境性能割の具体的な制度がまとまりました。営業車、軽自動車に対する軽課が維持されるとともに、現在のエコカー減税に比べて負担軽減が図られています。トラック、バスに関する環境対策・省エネ対策に対する予算措置とも相まって、環境性能に優れた車両への計画的な代替が進むことを期待しています。
 また、地域交通の分野においても、電気自動車や水素自動車の導入や、超小型モビリティの活用による先駆的な取り組みを引き続き支援して参ります。

【フォルクスワーゲン社の排ガス不正問題】
 昨年9月、フォルクスワーゲン社のディーゼル乗用車に係る排出ガス不正問題が発覚しました。問題となったディーゼル乗用車は国内で正規販売されていないものの、本事案は排出ガス規制の信頼性に関わる極めて重大な問題だと認識しています。国土交通省としては、昨年10月に環境省と合同で検討会を設置し、型式指定の審査時に車載式測定器による路上走行試験を導入する等の審査方法の見直しについて検討を開始したところです。今後、検討会からの提言や欧米における路上走行試験の導入に向けた検討状況を踏まえつつ、必要な対策を講じることとしています。

 以上、年頭に当たり、自動車行政の重点施策を述べさせていただきました。自動車の利用者の方々、自動車関係の事業者の方々、そして地方自治体その他の関係者の方々のニーズやご意見をしっかりと把握した上で、地方運輸局等とともに、関係する諸機関・団体との連携を一層密にしつつ、諸課題の解決に向けて全力を尽くす所存です。本年も自動車行政の推進に対しまして、より一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
 最後になりましたが、自動車に関わられている皆様方が、この一年、それぞれの分野において大いにご活躍され、一層のご発展を遂げられますことを祈念いたしまして、年頭のご挨拶とさせていただきます。