年頭所感

厚生労働省労働基準局長  金 子 順 一

 

 あけましておめでとうございます。
 新年を迎え、皆様の御健康と御繁栄を心よりお祝い申し上げます。
 さて、昨年は12月に至り、平成19年に国会に提出して以来、継続審議を重ねてきた労働基準法の一部を改正する法律が、与野党による修正を経て成立しました。この法律は、長時間労働を余儀なくされる労働者が、特に子育て世代の男性労働者を中心に増加している現状において、特に長い長時間労働の抑制に大きく寄与するとともに、働く方々の年次有給休暇への多様なニーズに対応する途を拓こうとするものです。我が国の労働力人口の中長期見通しを視野に入れ、労働者一人ひとりが仕事と生活を調和させつつ、充実した生涯を送れるよう社会全体で取り組んでいくことが必要であると考えております。
 他方、足下に目を転じれば、経済情勢は厳しさを増しておりますが、こうした現下の社会経済情勢の下でも、解雇、賃金不払等の事案への適切な対応、安全衛生の確保や迅速・的確な災害補償に努めていかなければならないことは言うまでもありません。
 年頭に当たり、労働基準行政の課題を今一度確認するとともに、本年は次のような施策を中心に取り組んでまいりたいと考えております。
 
 第一は、厳しい経済情勢下での法定労働条件の確保等についてです。
 経済情勢の悪化等の影響により解雇や雇止め、労働条件の切下げ等の事案が増加しております。こういった状況を踏まえ、労働基準法等で定める法定労働条件の遵守指導はもとより、労働契約法や裁判例等について、各種機会を利用して情報提供し啓発指導を行ってまいります。
 また、現下の経済情勢から生じる様々な労働条件や労務管理に関する相談に対応するため、総合労働相談コーナー及び労働基準監督署に「労働条件特別相談窓口」を設置する等の対応を行ってまいります。
 さらに、派遣労働者やパートタイム労働者等の有期契約労働者に関し、雇止め等に関する基準について周知を図るとともに、問題が認められる事案については使用者に対し積極的に助言・指導を行ってまいります。
 
 第二は、最低賃金についてです。
 最低賃金制度は、今後ともセーフティネットとして一層適切に機能する必要があります。このため、最低賃金の決定基準について、生活保護との整合性に配慮するよう明確化すること等を内容とする改正最低賃金法が昨年7月に施行されました。
 平成20年度の地域別最低賃金額の改定については、最低賃金審議会において調査審議がなされた結果、全国加重平均で16円の引上げとなりました。
 このように、最低賃金額が大幅に引き上げられたことから、インターネットなどを活用した広報の実施などにより、労使団体等広く国民に最低賃金の周知徹底を図るとともに、引き続き最低賃金の履行確保上問題があると考えられる地域、業種等を重点とした監督指導を行ってまいります。

 第三は、仕事と生活の調和についてです。
 最近の労働時間の動向を見ると、労働時間が短い者の割合が増加傾向にある一方で、労働時間が長い者の割合も高い水準で推移している状況にあります。また、年次有給休暇の取得率も低い水準で推移しており、仕事と生活の調和の実現に向けた労働時間等の見直しが急務であると考えています。
 このため、平成19年12月に策定された「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」等を踏まえ、仕事と生活の調和の実現に向けて、我が国を代表する企業における取組状況や成果を広く周知する「仕事と生活の調和推進プロジェクト」の展開などの社会的気運の醸成、中小企業事業主に対する助成などによる年次有給休暇の取得促進など、社会全体で働き方の改革を進めているところです。
 また、今般成立した改正労働基準法は、月60時間を超える時間外労働について法定割増賃金率を5割に引き上げること等を内容としており、労働者の健康の保持とともに仕事と生活の調和にも資するものであることから、平成22年4月1日の施行に向けて、その趣旨及び内容について労使双方に対して周知を図ってまいります。

 第四は、労働者の安全と健康確保対策の推進についてです。
 増加している派遣労働者の労働災害を防止するため、派遣元、派遣先事業場が連携して適切な安全衛生管理を実施する方法等を示したマニュアルを作成するなどの支援を実施してまいります。
 過重労働対策については、「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づき、長時間労働者に対する医師の面接指導等労働者の健康管理に係る措置など、事業者が講ずべき措置の実施を徹底してまいります。また、事業場におけるメンタルヘルスケアの取組を一層推進するため、「メンタルヘルス対策支援センター」において、事業者等からの各種相談等を実施する等、事業場の取組に対する支援等を行ってまいります。
 また、引き続きリスクアセスメントの普及促進をはじめ企業の自主的な安全衛生対策を促進するとともに、機械災害、墜落・転落災害などの災害防止や労働災害が多発している業種に対する労働災害防止対策等を充実したいと考えております。

 第五は、労働保険の適用・徴収の着実な推進についてです。
 社会保険と労働保険の徴収事務の一元化については、平成21年度から、労働保険の年度更新の申告期間を6月1日から7月10日までと変更し、社会保険の算定基礎届提出の時期と統一しました。今後は、その円滑な実施に向け事業主への周知広報や体制整備を図ってまいります。
 また、労働保険適用徴収・電子申請システムの活用については、利便性の向上にも一層努めてまいります。

 最後に、今後とも労働基準行政に対する一層の御理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げますとともに、本年の皆様の益々の御活躍を祈念し、新年の挨拶とさせていただきます。