年頭所感

厚生労働省労働基準局長  金 子 順 一

 

 あけましておめでとうございます。
 新年を迎え、皆様の御健康と御繁栄を心からお祝い申し上げます。また、労働基準行政、とりわけ労働安全衛生行政の推進につきまして平素より格別の御指導、御支援を賜り、厚く御礼申し上げます。
 さて、昨年は年間を通じて雇用失業情勢の厳しい状況が続きました。こうした中で、労働基準行政としては、労働者派遣契約の中途解除等を契機とする解雇や新規学校卒業者の採用内定取消しをはじめとする解雇や雇止め等について、労働契約法や裁判例に照らし不適切な取扱いが行われることがないよう、あらゆる機会を通じて啓発指導を実施するとともに、労働基準法に違反する事業場に対しては、速やかに監督指導を実施してきたところです。
 本年も厳しい経済情勢が続くものと見込まれる中で、こうした取組みを引き続き講じていくこととしておりますが、これと並んで、社会経済の変化を見据えて、働く方々を始め国民のニーズに応えるべく本年は特に次のような施策を中心に取り組んでまいりたいと考えております。

 第一は、改正労働基準法の施行についてです。
 長時間労働を抑制し、労働者の健康を確保するとともに仕事と生活の調和がとれた社会を実現することを目的とする改正労働基準法が、本年4月1日から施行されます。今回の改正は、1か月60時間を超える法定時間外労働に対する割増賃金率の引上げ、代替休暇制度の創設、時間単位年休制度の創設等が主な内容です。厚生労働省においては、ホームページに改正労働基準法のページを作成し、関係する省令、告示、通達、パンフレットやQ&A等各種資料を掲載するとともに、各地の労働基準監督署等で説明会を開催するなど周知を進めてきているところです。
 施行日まで3か月を切ったことから、労使関係者におかれても、長時間労働の抑制等に向けて積極的な取組みをお願いいたします。

 第二は、最低賃金についてです。
 近年の社会経済情勢の下、最低賃金制度のセーフティネットとしての機能は、さらに重要性を増しているところです。
 平成21年度の地域別最低賃金額の改定については、全国加重平均で10円の引上げとなりました。改正された最低賃金額については、インターネットの活用を含めた広報の実施などにより、広く国民に最低賃金の周知徹底を図るとともに、引き続き最低賃金の履行確保上問題があると考えられる地域、業種等を重点とした監督指導を行ってまいります。

 また、連立政権においては、「最低賃金の引き上げを進める」ことが合意されています。
 今後、最低賃金の更なる引上げに向けて、労使関係者との調整を行い、中小企業における円滑な実施を図るための財政上・金融上の措置を実施しつつ、雇用の安定にも配慮して、取り組んでまいります。

 第三は、有期労働契約の在り方についての検討です。
 一昨年来の雇用不安などを背景として、有期労働契約の在り方について関心が高まってきていますが、その検討に当たっては、派遣労働者、期間工、パート労働者など様々な形態で働く方々を視野に、その実態を踏まえた十分な議論が必要となります。
 このため、平成21年2月に、学識経験者による研究会を立ち上げ、関係者からのヒアリングや実態調査を行うなど、有期契約労働者の実態の把握に努めるとともに、契約の締結から終了までの各方面における論点について御議論をいただいているところです。
 今後、この研究会において更に研究を深め、その成果を労働政策審議会における労使関係者の検討につなげ、必要となる施策について検討してまいります。

 第四は、労働者の安全と健康確保対策の推進についてです。
 過重労働対策については、長時間労働者に対する医師による面接指導等、労働者の健康管理に係る措置の徹底を図ってまいります。また、メンタルヘルス対策については、「メンタルへルス対策支援センター」における予防から復職までの総合的な支援に加え、新たに管理監督者を対象としたメンタルヘルス教育を実施してまいります。
 労働者の安全確保対策については、機械災害、墜落・転落災害等の重篤な労働災害防止のため、機械等の構造規格の計画的見直し、足場からの墜落・転落災害防止対策の充実を図ったところであり、今後、事業者による自主的な労働災害防止活動を支援するために業種別のリスクアセスメント導入マニュアルの作成・公表等を進めてまいります。
 さらに、近年就業者数が増加し、労働災害も多く発生している派遣労働者の労働災害防止対策についても、派遣労働者に対する入職時教育の徹底や事業場の安全管理体制の確立等に取り組んでまいります。

 第五は、労災保険の窓口業務等の改善についてです。
 国民に対するサービスの質を向上させる取組みの一環として、昨年10月から、労働基準監督署に労災保険に関する相談に来られた方に対し、分かりやすいパンフレットを用い、丁寧で分かりやすい説明を行うとともに、申請後の処理状況を連絡することにより、労災の給付手続に対する被災労働者をはじめとした国民の皆様の満足度の向上に努めているところです。
 本年においても、引き続き、これらの取組みを継続し、労災保険の窓口業務等の一層の改善を進めていきたいと考えています。

 雇用や働き方をめぐる不安がかつてないほど高まりをみせる中で、適正な労働条件の確保を使命とする労働基準行政の役割は、極めて大きいものがあります。この使命を全うするため、労働基準行政は職員一同、全力で行政を展開することとしておりますので、今後とも一層の御理解、御協力を賜るようお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。